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東京地方裁判所 平成2年(ワ)14210号 判決

埼玉県朝霞市朝志ケ丘一丁目二番一-一三〇七号

原告

小川佳久

東京都千代田区駿河台四丁目六番地

被告

株式会社 日立製作所

右代表者代表取締役

三田勝茂

東京都港区西新橋二丁目一五番一二号

被告

株式会社 日立家電

(旧商号 日立家電販売株式会社)

右代表者代表取締役

三善康也

右両名訴訟代理人弁護士

小林俊夫

右訴訟復代理人弁護士

太田穰

右両名輔佐人弁理士

林實

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告らは、原告に対し、各自金八五〇〇万円及び内金四一〇〇万円に対する昭和六三年二月一八日から、内金四四〇〇万円に対する平成二年一一月一日から、各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は、被告らの負担とする。

三  仮執行宣言。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、昭和五四年九月一四日、名称を「洗濯機」とする発明(以下「本件発明」という。)について、特許出願(昭和五四年特願第一一七四〇五号)したところ、昭和五六年四月二二日出願公開(特開昭五六-四三九九〇号)され、更に、昭和六一年一二月二日、特許法一七条の二の規定による特許請求の範囲を含む補正が特許公報に掲載された後、昭和六三年二月一八日、特許出願公告(特公昭六三-七七九八号)されたが、特許異議の申立てがあり、平成二年四月一九日特許異議の申立ては理由があるとする決定とともに拒絶査定を受けた。

2  そこで、原告は、同年八月一五日、査定不服の審判(平成二年審判第一四七六四号)を請求したところ、平成四年九月一七日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があった。

3  原告は、東京高等裁判所に右審決の取消訴訟(同裁判所平成四年(行ケ)第二二四号)を提起したが、同裁判所は、平成五年一二月二一日、原告の請求を棄却する旨の判決を言渡したので、最高裁判所に上告した(平成六年(行ツ)第四九号)ところ、最高裁判所は、平成七年一月二四日、原告の上告を棄却する旨の判決を言渡した。

二  原告の請求及び主張

1  原告は、被告らが製造販売する別紙物件目録記載の物件が、原告の本件発明の技術的範囲に属すると主張し、本訴において、特許法六五条の三第一項の規定による補償金として昭和六一年一二月二日から同六三年二月一七日までの本件発明の実施に対し通常受けるべき金額に相当する四一〇〇万円及び出願公告の効果としてのいわゆる仮保護の権利の侵害による損害賠償金として昭和六三年二月一八日から平成二年一〇月三一日までの間の侵害による損害額である四四〇〇万円の合計八五〇〇万円の支払いを請求(いずれもその全部請求)するものである。

2  なお、原告は、前記一2の審決には原告が前記一3の審決取消訴訟で主張した手続上、実体上の取消事由があり、前記各判決の判断は、いずれもこれを看過した違法なもので、再審事由があると主張する。

第三  判断

一  前記第二、一のとおり、最高裁判所は、平成七年一月二四日、原告の上告を棄却する旨の判決を言渡し、右判決は上告審判決であるから言渡しによって即時確定したのであるから、原告の本件発明にかかる特許出願を拒絶すべき旨の査定は、右同日確定したものである。したがって、特許法五二条三項(六五条の三第四項により準用される場合を含む)により、原告の主張する権利はいずれも初めから生じなかったものとみなされる。

なお、原告は、右審決には原告が前記審決取消訴訟で主張した手続上、実体上の取消事由があり、前記各判決の判断は、いずれもこれを看過した違法なもので、再審事由があると主張するが、再審判決により前記判決が取り消されていない以上、前記各判決の効力を否定する事由はない。

二  したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求は、いずれも理由がない。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 池田信彦)

(別紙)

物件目録

別紙1〔図面〕により模式的に表された、左記の構成を有する「からまん棒洗濯機」(全自動式・二槽式・三槽式)

洗濯槽底部中央に回転軸を介してパルセータを有し、「上下・左右、二方向の反転水流(上下左右の水流)」で表現される水流に含まれる渦巻水流、又は「上下・左右、二方向の反転水流(上下左右の水流)」とは別個に発生する渦巻水流を生じ、上部に多数の穴を有する棒状の中空体を右パルセータの中央部に立てることにより右棒状中空体を洗濯槽の中心に設置し、一本の(該)棒が布がらみをほどいた、「からまん棒方式(NEWからまん棒を含む)」洗濯機。

なお、昭和六一年一二月二日から同六三年二月一七日までの主な機種名は左の一のとおりであり、昭和六三年二月一八日から平成二年一〇月三一日までの主な機種名は左の二のとおりである。

一 全自動洗濯機(「からまん棒洗濯機、及びその1種のNEWからまん棒洗濯機」 青空・静午前)のKW-2X、KW-9L、KW-10LP、KW-27X、KW-32LX、KW-35LX、KW-46X、KW-46XC、KW-52X、KW-57X、KW-S411、KW-S421、KW-S421C、KW-S521、KW-S531、KW-S431、KW-S451、KW-S311等

三槽式洗濯機(「からまん棒洗濯機」WinW)のKWT-70W、KWT-80WX、KWT-711W、KWT-712W、KWT-713WX、KWT-731WX、KWT-811WX等

二槽式洗濯機(「からまん棒洗濯機」青空)のKWT-610L、KWT-632X、KWT-64、KWA-680LX、KWT-830LX、KWT-836X、KWT-872X、KWA-880LX、KWT-950LX等

二 全自動洗濯機(「からまん棒洗濯機、及びその1種のNEWからまん棒洗濯機」青空・静午前、Bio、これっきりボタン)のKW-2X、KW-10LP、KW-32LX、KW-35LX、KW-46X、KW-52X、KW-57X、KW-S411、KW-S421、KW-S421C、KW-S423(注2)、KW-S521、KW-S531、KW-S431、KW-S451、KW-S311、KW-S431A、KW-S531A、KW-S312、KW-S312NW、KW-S452(注1)、KW-S452C、KW-S422、KW-S552(注1)、KW-S542、KW-S582、KW-S562、KW-B583(注2)、KW-B563(注2)、KW-B483(注2)、KW-B463(注2)、KW-45H1(注2)、KW-50K1(注2)、KW-50H1(注2)等

〔注1:特公昭63-7798号の公告後、原告に仮保護の権利侵害を指摘されて、新機種KW-S452、KW-S552の一部に、穴を完全に穿孔せずに、容易に穿孔可能な薄いプラスチックシートの層を残した凹みを設けたもの(或いは穴を筒の内側から薄いプラスチック層で塞いだもの)も販売した。〕

〔注2:これ等の機種にも、筒状の柱上部の従来の多数の穴の位置に、容易に穿孔可能な多数の凹みを設けた製品が製造・展示・販売・宣伝されている。〕

三槽式洗濯機(「からまん棒洗濯機」WinW)のKWT-711W、KWT-712W、KWT-713WX、KWT-731WX、KWT-811WX等

二槽式洗濯機(「からまん棒洗濯機」青空)のKWA-680LX、KWA-880LX、KWT-950LX等

別紙 1 [図面]

〈省略〉

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